型の芸術「歌舞伎」を楽しむ。お目当ては、かっこいい役者。


芸術 アート 金比羅 こんぴら 歌舞伎
琴平町 金丸座 歌舞伎 歌舞伎の面 歌舞伎の面 歌舞伎の面





 「歌舞伎を観に行きませんか?」と誘われたとして、
一瞬、躊躇してしまう方がいるかもしれない。

 その理由のひとつに「何を言っているか分からない」「お話が理解できない」という理由があるのではないか。現代の言葉とはいささか異なる言葉遣いの上に、あの独特の節回し。それを「難解」だと感じるのだと思うが、歌舞伎が大好きという方も、実のところお話は見ていないのである。

 そもそも歌舞伎で上演されるもののほとんどは、長いストーリーの、ほんのワンシーンだけなのである。春に金毘羅(こんぴら)の金丸座(かなまるざ)で上演される『仮名手本忠臣蔵(かなてほんちゅうしんぐら)』は、江戸中期から繰り返し上演されてきた、人気の高い演目です。全編は十一段、今回(※2006・4)上演されるのは「五段目」と「六段目」である。忠臣蔵というと「仇討ちもの」だが、この五段目、六段目は、その流れはくんでいるものの、流れにそえなかったお軽・勘平の悲しいお話なのである。十一段中、最も面白いと思われるシーンといえる。

 しかしながら、ストーリーを全く知らずにいきなり観に行ったとしたら、おそらく何の事やら全く楽しめないだろう。お話の途中からいきなり始まるのだから、当然である。しかも言葉をキーワードにストーリーを探ろうとしても、初めてご覧になった方などは、あの独特の口調を「本当に同じ日本語だろうか?」と思うだろう。しかし、ある程度のあらすじさえ知っていれば、言葉が不明瞭であろうと気にならないはずである。役者達の動きから全てが伝ってくるのである。

 では、歌舞伎では一体何を楽しむのかというと「役者」です。

 ストーリーがすでに決まっているとはいえ、その解釈や表現方法は常に模索され、新しく、より面白く作り変えられてきた。ストーリーの大枠、作品の骨格となる変わらない部分を「世界」、工夫によってそのつど創案される部分を「趣向」と呼んでいる。誕生から四百年、「世界」と「趣向」の絡み合いが、新しい歌舞伎を作りつづけてきた。役者がどのように演じるのか、どれほど美しく、艶やかに表現するのか、それを目で楽しむのが歌舞伎なのではないかと私は考える。その美しさは、歌舞伎の解説などでよく耳にする「型」とか「見得」の瞬間に、特に輝き、そのあまりの美しさに、はっと息をのんでしまうのである。

 型は、ひとつの芝居がくりかえし上演されていくうちに洗練されて、伝承されてきた。心理を形で表現するのが型であるため、視覚を重視する歌舞伎は「型の芸術」ともいわれる。役者の演技力が要求されることはいうまでもない。手のあげさげひとつも、ちょっとした角度の違いで全く異なった印象を受けるのである。

 ある役者の工夫が、ひとつの型として洗練され伝承されていく。よけいなものをそぎ落とした美しさを伝えて、残していく、歌舞伎とはそれを数百年繰り返してきた上に成り立っている芸術なのである。


 『仮名手本忠臣蔵』「五段目」「六段目」は、女でしくじった男「勘平」と、ほれた男のためならなんでもする純愛女「お軽」の物語。
 主君が城中で刃傷事件を起こしているとき、色男勘平はお供として行ったにもかかわらず、恋人お軽とひそかに逢引していた。それを恥じて自害しようとするのだが、お軽に引き止められ、ひとまずお軽の実家へ身を寄せる事に。その後、猟師として暮らすのだが、早く軍資金を持参して、討ち入りの仲間に加えてもらいたいと考えている。
 一方、お軽の両親は、娘の身を売ってまでも勘平のために軍資金を用意します。お軽の父与市兵衛は娘を売った金を持って帰る途中、元塩冶屋の家臣定九郎に金を奪われて、殺されてしまう。定九郎は、仇討ちに加わるどころか、敵側につくような男だったのだ。偶然にもそこを通りかかった勘平は、月も出ていない真っ暗闇だったので、いのししと間違えて定九郎を討ってしまう。勘平は人を殺してしまったことに驚きつつも、つい魔がさして軍資金にと懐の金を奪うのである。実は勘平は与市兵衛の仇を討ったことになるのだが、定九郎の懐から奪った財布が与市兵衛のものだったために、与市兵衛殺しの犯人にされてしまう。
 そして、追いつめられた勘平は切腹することになるのである。


 このお話は、もともとは人形浄瑠璃のために書かれたお話のため、太夫が地の部分やせりふの一部を語り、役者は音楽劇的に誇張された様式的な演技をするという特徴が見られる。完全にお芝居にするのではなく、人形が演技をしているさまを演技する、という面白い表現にも注目してみると、さらに楽しめるのではないだろうか。

 桜の季節、日々の天候までも感じることができる、日本最古の芝居小屋「金丸座」での歌舞伎鑑賞。素敵な春の一日を、私は今から楽しみにしている。 あなたもぜひご一緒しませんか。
資料提供/琴平町観光課
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