映画:忘れられない一瞬がある

「バトルフィールド・アース」
Battlefield Earth



ラジー賞7冠の超迷作!?




 この作品は2000年の第21回ゴールデンラズベリー賞(アカデミー賞の前夜に、その年の最低映画を決める映画賞。ラジー賞ともいう)で最低作品賞・最低男優賞(ジョン・トラボルタ)・最低助演男優賞(バリー・ペッパー)・最低助演女優賞(ケリー・プレストン)・最低スクリーンカップル賞(ジョン・トラボルタ及びこの映画で一緒にスクリーンに映ってしまった人全員)・最低監督賞(ロジャー・クリスチャン)・最低脚本賞(コリー・マンデル)を受賞。さらにラジー賞創設25周年記念大会では、めでたく「歴代最低ドラマ作品賞」を受賞した上、2010年には「2000年代最低賞」まで受賞し、ある意味すごい快挙を達成した作品である。ちなみに、ラジー賞で過去最多受賞作を調べてみると、なんと「ジャックとジル」という作品が2012年に第32回ゴールデンラズベリー賞10部門全てにノミネートされ、その全てを受賞している。上には上がいるものだ。
 トラボルタの俳優生命まで危機に陥ったと言われる本作だが、原作はロン・ハバードが1982年に書いた同名SF小説である。ロン・ハバードはサイエントロジーという新興宗教(自己啓発セミナー)の主催者で、熱心な信者であるジョン・トラボルタが原作に惚れこみ、自ら製作総指揮と出演を買って出たというのが真相。しかし、本作を観たからといってサイエントロジーに感化されてしまうというような宣伝映画ではない。
 サイクロ人の攻撃によって地球はわずか9分で壊滅し、人類文明はあっけなく崩壊した。それから1000年の時を経た西暦3000年の地球が舞台だ。地球を支配したサイクロ人は、人間よりも遥かに高い知識を持った巨人の異星人。サイクロ人にとって地球の大気は毒性を持つため、巨大なドームを作ってその中にガスを満たして生活し、人類を奴隷にして鉱物資源の採掘を行っている。サイクロ人に捕まっていない人類は小さな集落で細々と原始時代さながらの生活を続けている。そんな集落で暮らす青年ジョニー(バリー・ペッパー)は、長老が教える伝説に疑問を持ち、それを確かめようと旅を始めるが、すぐにサイクロ人の奴隷狩りに捕まってしまう。
 一方、サイクロ人の地球支配部隊長タール(ジョン・トラボルタ)は〝 緑の森と青い空しかないクソみたいな星〟にウンザリしていて、サイクロ星に異動願いを出しているが、無期限に異動を拒否されてしまう。そんな時、部下のカー(フォレスト・ウィテカー)から「地滑りが起きたところに金鉱脈が露出している」という知らせを受ける。地球人同様、サイクロ人にとっても金は特別な価値を持つ資源なのだ。そこでタールは、サイクロ星の本部に秘密で金を採掘し、それを資金にサイクロ星に戻り贅沢三昧の生活をしようと画策する。しかし、金鉱脈周辺が放射能で汚染されている(サイクロ人は放射能に弱い)ため、タールは奴隷のジョニーをリーダーにして地球人に採掘作業をさせようと考え、ジョニーにサイクロ語を教え込む。ジョニーはあっという間にサイクロ語を習得し、さらに宇宙船の操作やコンピューターの操作まで独学で覚えてしまう。タールから1000年間放置された廃墟のことを聞いたジョニーは、廃墟となった基地に核兵器があることを知り、その核兵器をサイクロ星に送り込んで破壊するという計画を思いつく。ジョニーは、囚われている仲間たちに「自由のために立ち上がろう」と呼びかけ、ついに独立戦争の火蓋が切られる…。
 まず、どうしても指摘したいのは、サイクロ人の外見。男も女も鼻毛のような紐を鼻の穴からぶら下げているのだ。(サイクロ人が地球の大気で生きていくための呼吸装置らしい。なぜか厚底ブーツも履いている)なぜ、トラボルタもバリー・ペッパーも「こんな鼻毛星人は画的に問題がある!」と言わなかったのか不思議でしょうがない。また、壮大なスケールの割にサイクロ人がとてつもなくセコい。人間よりも遥かに高い知識を持った巨人の異星人で、様々な惑星を襲撃して資源を搾取しているという設定だが、とてもそうは思えないほど頭も悪い。特にジョン・トラボルタ演じるタールは、サイクロ人の中でも超優秀でエリート中のエリートのはずなのだが、上司の女に手を出して地方(地球)に飛ばされ、本部に評価されない事でサイクロ星に帰れず、イラッとして部下に当たり、とうとう横領まで企てる。まるでサラリーマンのような悲哀が滲み出していて笑ってしまう。同じくサイクロ人を演じるフォレスト・ウィテカーと、昇進がどうしたとか、嫁さんの器量がどうだとか、妙に生活感あふれる会話を交わしているのも、とても異星人とは思えない。
 一方、原始時代のような生活を送り、字も読めなかった地球人ジョニーは、ほんの2週間ほどフライト・シミュレーターで訓練しただけで戦闘機ハリアーを操縦し、宇宙人との空中戦に勝ってしまう。どれだけ天才なんだ。他にもツッコミたくなるシュールなシーンが満載で、最後まで飽きずに観ることができる。実はこの作品、日本では意外とファンが多いという。どこから、何に対して、どのようにツッコめば良いのか分からないほどツッコミ所満載、ありえない展開が笑いを誘う等々の理由で、一部から熱狂的に支持されている作品なのだ。
 大真面目にやって外しているのか、もともとコメディのつもりなのか分からないが、この作品がSF超大作ではないことだけは確かだ。むしろこれはB級SF映画なのである。荒唐無稽な設定といい、ツッコミどころ満載な構成といい、只者とは思えないセンスが光る。感動作を期待して観ると大ハズレだが、客観的に分析しようという姿勢で観ればかなり楽しめる。実はしぶとく生き残っていたタールの最後までトホホな姿も笑えるので、興味のある方はぜひ一度観ていただきたい。

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