映画:忘れられない一瞬がある

「マチェーテ・キルズ」
Machete kills



痛快!爆笑!のB級アクション




 ロバート・ロドリゲス監督が手がけたB級アクション「マチェーテ」(2010)の続編。あらゆる意味で前作よりスケールアップしているが、前作を観ていなくても問題なく楽しめる。もともと「マチェーテ」は、「グラインドハウス」という企画の中でフェイク予告として作られたものが本当に映画化されたのだが、2作目もオープニングは「マチェーテ・キルズ・アゲイン・イン・スペース」という予告編から始まる。これもフェイクかと思ったら、終盤にかけてどんどんSF化していき、本当にこんな展開になるの!?というラストで終わる。
 潜入捜査官のマチェーテ(ダニー・トレホ)は、入国税関管理局の捜査官サルタナ(ジェシカ・アルバ)の捜査に協力し、汚職軍人が麻薬カルテルにライフルを横流しする現場に踏み込む。しかし、ライフルだと思っていた物はミサイルだと判明。その直後、マスクの武装集団が現れて軍人もカルテルも皆殺しにされ、サルタナも射殺されてしまう。保安官に捕えられたマチェーテは絞首刑になるが、大統領(カルロス・エステベス)から緊急任務の電話がかかり、恩赦される。(人類の最終兵器マチェーテは首吊り程度では死なないのだ)。 ホワイトハウスに呼び出されたマチェーテは、前科帳消しと引き換えに、メキシコの元麻薬カルテルで革命家のメンデスという人物を始末してほしいという依頼を受ける。 マッドマンと呼ばれているメンデスは多重人格者の狂人で、ワシントンにミサイルを撃ち込もうとしているのだ。しかもメンデスの心臓とミサイルの発射は連動しており、それを解除できるのは、世界一の武器商人ヴォズ(メル・ギブソン)だけ。 マチェーテは、メンデスを拉致してアメリカに連れ帰ろうとする。しかし、国境へ向かうマチェーテとメンデスを、麻薬カルテル、娘を殺されて復讐に燃える娼婦マダム・デズデモーナ、賞金稼ぎの殺し屋〝カメレオン〟が狙う。彼らに襲われながらも国境の地下トンネルからアメリカに戻る2人。しかし、謎の組織に襲われてメンデスは殺され、マチェーテも撃たれて捕まる。目を覚ますとそこにいたのは開発者のヴォズ。メンデスの心臓だけはケースに入れられて動いている。ヴォズには未来を見通す能力があり、地球の終わりが見えているのでロケットを造って宇宙に移住しようとしているのだ。さらにヴォズがメンデスの心臓を撃ったので発射装置が起動し、ミサイルが発射されてしまうことに。果たしてマチェーテは人類を救うことが出来るのか!?
 ロドリゲス監督のB級映画愛、そして偏執的なまでのプロペラ愛に溢れた本作。 引きずり出した敵の腸をヘリのプロペラに巻き付け、引っ張られた相手がバラバラになったり、逆に自分をワイヤーでプロペラに結びつけて空中を回転しながら敵をぶった切っていったりと、やりたい放題。武装集団が首をポンポン斬るシーンは、スタッフがマネキンの首を下から放り上げているのが丸分かりで笑えるし、好きな人にはたまらない劇画的アクションが満載だ。マダム・デズデモーナのガトリングガンを仕込んだブラジャー〝 ダブルD〟や股間の銃という構造が良く分からないけど愉快な武器、殺し屋カメレオンのキューバ・グッディング・Jr・→レディー・ガガ→アントニオ・バンデラスという骨格を全く無視した変化ぶりなどなど、良い意味でロドリゲスのブレないお馬鹿さが炸裂している。
 「マチェーテ○○しない」シリーズも地味に面白い。このネタは元々、ダニー・トレホが毎日のようにロドリゲスにマチェーテの役のアイデアを電話してくるのにうんざりしたロドリゲスが、「メールで送ってくれ」と言ったところ「マチェーテ、メールしない」と言われたことに感動して始まったらしい。従兄弟同士ならではの微笑ましい話である。しかし、ゴツい風貌のダニー・トレホが「マチェーテ、ツイートしない」などと言うと可愛く感じてしまうのは何故なのか。
 脇を固める豪華な出演者たちにも要注目。レディー・ガガにとっては映画デビュー作でもある本作だが、他にも出演作品はいくらでも選べたはずなのに、この作品を選ぶところが何ともガガらしい。他にもハリウッドの悪童として名高いチャーリー・シーンが大統領を演じたというミスマッチも面白い。クレジットはカルロス・エステベスとなっているが、これはチャーリー・シーンの本名。ヒスパニック系だらけの作品なので、本名で出た方が合っていると判断したとか。超有名どころがチョイ役で出演しているという贅沢さだが、みんな嬉々として演じているのが伝わってくる。ちなみに大統領との連絡係であるミス・サン・アントニオを演じたアンバー・ハードは、2015年2月にジョニー・デップと結婚している。 「マチェーテ」シリーズについてロバート・ロドリゲス監督は「ほんとにいかれたシリーズなんだ。ルールもなにもない。だからすごくやりがいがある。たぶん、何でもありっていうのが多くの役者を惹き付けたんじゃないかな。本当に自由に作っていいという仕事があったら、それはもう仕事じゃない。気楽なもんさ。楽しいし、遊んでるのと同じだからね。」と語っている。その言葉通り、全編通して荒唐無稽。しかし、ふざけているようで計算されている、その匙加減はさすが。悪ふざけの達人ロドリゲスの本領が存分に発揮されている。
 今年3月末、ジャンル系カルチャーの祭典にゲストとして登場したダニー・トレホが〝ロバートと俺は「マチェーテ・キルズ・イン・スペース」の製作を進めつつある〟と語っていたという情報もあるようなので、3作目が現実に公開される可能性は充分に考えられる。次はどんな壮大なぶっ飛び映画を作ってくれるのか、本当にジャスティン・ビーバーとディカプリオは出演するのか!?ロドリゲスならびにマチェーテファンには期待が膨らむ話である。

映画トップ